AtCoder 企業対抗リーグ 2026 第1戦 結果

最終結果

最終的にはPreferred Networksが2位に234点差をつけましたが、75分時点での合計ポイント差はわずか6点でした。序盤はTHIRD、中盤からPreferred Networks、そして終盤はPreferred Networksがリードを広げる展開となりました。

順位 チーム 選手 合計ポイント 最終スコア 1位との差
1 Preferred Networks asi1024, saharan 1566 934,151
2 THIRD siman, Shun_PI 1332 931,363 234点差
3 ALGO ARTIS eijirou, terry_u16 894 930,656 672点差
4 アスプローバ kozima, HNN_8127 654 928,616 912点差
5 ユニークビジョン minato_, kaliafluorido 414 918,394 1,152点差

第1戦の問題:マスを磨いて、少ないターンで目的地を巡る

第1戦の問題は 「Polish and Slide」 。盤面上に並んだ目的地を、指定された順番で訪れる最適化問題です。各ターンでは、現在いるマスを「磨く」か、上下左右のいずれかの方向に「滑る」かを選びます。
「滑る」を選ぶと、磨かれているマスの上では止まらずに進み続け、盤面の端にぶつかるか、まだ磨かれていないマスに到達したところで止まります。移動中に次に訪れるべき目的地を通過した場合も、その目的地を訪れたものとして扱われます。つまり、うまくマスを磨いておくと、1ターンで長い距離を移動しながら目的地を訪れることができます。この問題では、すべての目的地を順に訪れるまでのターン数をできるだけ少なくすることが目標です。

Polish and Slide のイメージ

第1戦の見どころ

1. 序盤はTHIRDがリード

30分・45分時点ではTHIRDが首位。いち早く磨きを活用した解法を提出し、他チームから一歩抜け出しました。

2. 60分からPreferred Networksが流れを変える

60分時点でPreferred Networksがチェックポイント首位に。75分時点では合計ポイントでもTHIRDを逆転しました。

3. 終盤はPreferred Networksがリードを拡大

90分以降は上位3チームが固まり、Preferred Networksが105分時点で934,151点に到達。そのまま開幕戦を制しました。

用語解説

スコアとポイント

スコアは提出そのものの得点です。一方、企業対抗リーグでは各チェックポイントでの順位に応じてポイントが入り、その合計ポイントで総合順位が決まります。そのため、あるチェックポイントでの獲得ポイントが高くても、総合順位では別チームが上になることがあります。

焼きなまし

焼きなましは、少し悪くなる変更もあえて一定の確率で採用しながら、より良い解を探す手法です。良くなる変更だけを採用する方法よりも、広い範囲を探索しやすくなります。

試合の流れ

30 / 45 / 60 / 75 / 90 / 105 / 120分の各チェックポイントを、展開ごとに2回分ずつまとめて振り返ります。

序盤:30〜45分 THIRDが序盤をリード

30分 20:30時点
順位 チーム スコア 獲得Pt 合計Pt
1位 THIRD 911,864 60 60
2位 Preferred Networks 868,425 30 30
2位 ALGO ARTIS 868,425 30 30
2位 アスプローバ 868,425 30 30
2位 ユニークビジョン 868,425 30 30
45分 20:45時点
順位 チーム スコア 獲得Pt 合計Pt
1位 THIRD 914,900 120 180
2位 Preferred Networks 909,069 96 126
3位 ユニークビジョン 897,863 72 102
4位 ALGO ARTIS 868,425 36 66
4位 アスプローバ 868,425 36 66

THIRDが単独首位。2位以下は横並びからのスタート

30分時点では、THIRDが911,864点で単独1位を獲得しました。他の4チームは868,425点で横並び。まずは確実にACを出してポイントを獲得する、堅実な立ち上がりでした。45分時点でもTHIRDは914,900点で首位を維持し、序盤の主導権を握りました。

THIRDの格子状ルート

THIRDの序盤の強さを支えたのは、盤面全体に大きな幹線を作る方針でした。目的地が盤面のどこに現れても、近くの幹線に乗ることができれば移動距離を短縮できます。

THIRDのビジュアライザ

中盤:60〜75分 Preferred Networksが逆転

60分 21:00時点
順位 チーム スコア 獲得Pt 合計Pt 総合順位
1位 Preferred Networks 925,427 120 246 2位
2位 THIRD 914,900 96 276 1位
3位 ALGO ARTIS 910,253 72 138 4位
4位 ユニークビジョン 897,863 48 150 3位
5位 アスプローバ 868,425 24 90 5位
75分 21:15時点
順位 チーム スコア 獲得Pt 合計Pt 総合順位
1位 Preferred Networks 933,605 180 426 1位
2位 THIRD 929,532 144 420 2位
3位 アスプローバ 922,218 108 198 4位
4位 ALGO ARTIS 911,643 72 210 3位
5位 ユニークビジョン 897,863 36 186 5位

60分でスコア首位、75分で総合首位へ

60分時点でPreferred Networksが925,427点を記録し、スコアでTHIRDを上回りました。この時点では合計ポイントではTHIRDが上回っており、総合順位はTHIRDが1位でした。しかし75分時点ではPreferred Networksが933,605点まで伸ばし、合計ポイントでも逆転。その差はわずか6点でした。

Preferred Networksは、先に経路を決めてからよく通るマスを磨く

Preferred Networksは、磨く場所を決めてから経路を決めるのではなく、逆転の発想で、経路を決めてから磨くとお得になるマスを磨くという方針でした。
75分以降は焼きなましを用いて目的地間の中継地点の追加・削除・変更を試し、様々な経路を探索していました。

Preferred Networksのビジュアライザ

終盤:90〜105分 上位3チームが固まり始める

90分 21:30時点
順位 チーム スコア 獲得Pt 合計Pt 総合順位
1位 Preferred Networks 933,902 240 666 1位
2位 THIRD 931,178 192 612 2位
3位 ALGO ARTIS 928,777 144 354 3位
4位 アスプローバ 922,218 96 294 4位
5位 ユニークビジョン 897,863 48 234 5位
105分 21:45時点
順位 チーム スコア 獲得Pt 合計Pt 総合順位
1位 Preferred Networks 934,151 300 966 1位
2位 THIRD 931,178 240 852 2位
3位 ALGO ARTIS 930,656 180 534 3位
4位 アスプローバ 922,218 120 414 4位
5位 ユニークビジョン 918,394 60 294 5位

Preferred Networksがリードを広げ、ALGO ARTISも3位を固める

90分チェックポイントでは、Preferred Networks、THIRD、ALGO ARTISの上位3チームが固まり始めました。105分チェックポイントでPreferred Networksは934,151点までスコアを伸ばし、これがチームの最終スコアとなります。THIRD、ALGO ARTISも高い水準まで迫りましたが、合計ポイントではPreferred Networksがリードを広げました。

ALGO ARTISの安定した幹線ルート型解法

ALGO ARTISは、格子状に磨く候補マスを配置し、そのマスを活用しながら目的地へ向かう経路を探す方針でした。中盤以降に順位を上げ、90分チェックポイントから3位を守りました。

ALGO ARTISのビジュアライザ

最終チェックポイント:120分 Preferred Networksが開幕戦を制覇

120分 22:00時点・最終
順位 チーム スコア 獲得Pt 合計Pt 総合順位
1位 Preferred Networks 934,151 600 1566 1位
2位 THIRD 931,363 480 1332 2位
3位 ALGO ARTIS 930,656 360 894 3位
4位 アスプローバ 928,616 240 654 4位
5位 ユニークビジョン 918,394 120 414 5位

アスプローバが見せた、終盤まで続く改善

アスプローバは、磨く場所を焼きなましで探す方針を継続しながら、探索時間や温度、幅優先探索(BFS)の目的地判定、配列実装を調整していきました。最終的には928,616点までスコアを伸ばし、4位で第1戦を終えました。

アスプローバのビジュアライザ

※ 同点のチームは同順位として表示しています。獲得Pt(獲得ポイント)はそのチェックポイント単体で得たポイント、合計Pt(合計ポイント)はその時点までに獲得したポイントの合計です。

各チームの戦いぶり

Preferred Networks

60分チェックポイントで首位に立ち、75分時点で総合順位でもTHIRDを逆転。5チーム中唯一、経路を決めてから磨くマスを決めるという逆転の発想による方針を採用し、これが見事に機能しました。

THIRD

30分・45分チェックポイントで首位を獲得し、序盤の主役となりました。格子状の幹線ルートで他チームをリードし、中盤以降は2位に下がったものの、最後まで2位を維持しました。

ALGO ARTIS

60分以降に順位を上げ、90分チェックポイントから3位を守りました。幹線ルート型の解法をベースに探索の改善を重ね、105分チェックポイントでは930,656点まで到達しました。

アスプローバ

75分チェックポイントで3位に入る場面もありました。焼きなましで磨く候補マスを探索し、幅優先探索(BFS)で経路を構築する方針で、終盤には928,616点まで伸ばしました。

ユニークビジョン

45分チェックポイントで3位に入るなど、序盤から中盤にかけて存在感を見せました。最終スコアは918,394点。着実にスコアを更新し、ポイントを積み重ねました。

AtCoder 企業対抗リーグ 2026 第1戦を終えて

第1戦はPreferred Networksが制しました。しかし、序盤から一方的な展開だったわけではありません。30分・45分時点ではTHIRDが首位に立ち、60分時点でも総合順位ではTHIRDが1位でした。流れが変わったのは中盤です。Preferred Networksが60分時点でスコア首位に立ち、75分時点で総合順位でも逆転。その後は終盤にかけてリードを広げ、最終的に1566点で開幕戦を制しました。

各チームのビジュアライザを見ると、同じ問題に対してもさまざまなアプローチがあることが分かります。今の方針を伸ばすのか、それとも別の解法に切り替えるのか。2時間という限られた時間の中で、2人で方針を相談しながら実装を進める判断力も、企業対抗リーグの大きな見どころです。さらに、コーディングの様子が配信されるという普段とは異なる環境で結果を出す難しさもあります。華麗なる選手の動きに、これからもぜひ注目してください。第2戦では、各チームが第1戦の結果を受けてどのような方針を取るのかにも注目です。

執筆:kaede2020